0 この記事を書いた経緯
ある方に「司法試験に受かるための方法」を教えて欲しいと言われて回答した内容を備忘的にここに記載しておきます。私のような合格してから10年も経っていて、かつ、何年も受験指導から離れている弁護士よりも、もっとずっと適切な回答をしてくれる方がたくさんいると思いますが、議論のきっかけになればという趣旨で投稿させていただきます。
以下、私の回答です(投稿用に大幅に加筆・修正しています。)。
1 はじめに
受かるための方法は一つではないと思いますし、万人に共通する方法もあまりないと思いますが、私が意識していたことの要点を記します。
2 多数派に乗っかる
司法試験は、「試験」に過ぎないので、試験に合格するという観点からは、「試験的に正しい」勉強をすることが必要だと思います。法律の世界は絶対的な正解がない場合も多いので、何が試験的に正しいかを見極めるのは結構難しいのですが、一つの正解として、「受験生の多数派が書くこと」が試験的な正解になると思っています。おそらくですが、全ての科目、全ての論点について、多数派が書くことを書ければ司法試験には上位で合格できるはずです。
ですので、私は、司法試験の勉強においては、自分のこだわりをあまり持たず、多数派が使う基本書やテキストを用いて勉強し、実際の試験においても多数派が書くであろう内容を書くように意識していました(こう書いてしまうと、「法律ってつまらない」と思われそうですが、実務に出てからのアプローチは全く違うものになりますし、学問としての法律を学ぶ姿勢もまた違うアプローチがあると思います。あくまでも、司法試験の勉強という観点からの話です。)。
3 同じ本を何度も読む
使用する基本書やテキストはあまり手を広げ過ぎず、「これ」と決めた本(上記のとおり、多数派が使っているメジャーな本)を何周も読むようにしていました。1周目より2周目の方が、2周目より3周目の方が圧倒的に早く読めるようになりますし、理解度もぐっと深まります。
何周もしていると、大体どの本でも1冊を1日かからずに読めるようになるので、試験直前期にざっと読み返して全体の記憶喚起ができるようにしていました。
4 まずは全体像の把握に努める
テキストを読んでいるときにわからないことがあるとそこで止まってしまい、いろいろ考えたり調べたりしたくなるものですが、少なくとも最初のうちはわからないことがあってもあまり気にせずにどんどん先へ読み進めていくのがよいと思います。わからない原因は、全体像を把握していないことによるものである場合が多く、読み進めていくうちにわからなかったことがわかるようになる、1周目にわからなかったことが2周目にはわかる、ということはめちゃくちゃ頻繁に起きます。
5 目的意識を持つ
当たり前のことですが、合格者と同じテキストを使ったからといって必ずしも合格できるわけではありません。どのテキストを使うかも重要ですが、何のためにそのテキストを使うかはもっと重要だと思います。そのテキストを使う目的によって、そのテキストとの向き合い方はかなり変わってくると思います。
たとえば、論文の問題集をやる場合、「時間を計って実際に論文を書く」というやり方もあれば、「問題文を読んで答案構成だけして実際に論文は書かない(すぐに答案例を読む)」というやり方もあります。いずれかのやり方が絶対的に正しいということはなく、たとえば、「論文を時間内に書ききる練習をしたい」場合は前者のやり方でしょうし、「きちんと論点を拾えるか確認したい」場合は後者のやり方が適切なやり方になると思います。テキストを使う際に、何の目的でそのテキストを使うのかという目的意識をはっきりと持って取り組むことが、効率的に実力を伸ばすうえで重要だと思います。
ちなみに、これは私の例ですので万人に有効なやり方とは思いませんが、私は全体像をざっくり把握したら、できるだけ早く論文の勉強に着手して論文を書く際のアウトプットの型を確立し(もちろん適宜型の修正はしますが。)、インプット時に「アウトプット時にどのように使うか」を意識してテキストを読むようにしていました。こうすることで、アウトプットの練習に割く時間をだいぶ節約できたと思っています。
また思い出したテクニック等あれば教えてください。ありがとうございます。