もう10数年前のことですが、司法試験の受験指導をしていた頃のメモがあったので、公開します。すでに古い情報もあるかもしれませんが、比較的汎用性のあることが書いてあったので、ご参考になれば幸いです。
第1 学習の流れ
1 基礎学習
その法律の根幹となる基本的事項(目的、構造、傾向等)を把握する。
2 アウトプットの確立
アウトプット方法(論文の型)を早めに確立する。アウトプットを確立していれば、インプットの勉強の際にもアウトプットを意識したインプットができるため、学習効率が格段に上がる。
3 論点の把握、論証の確立
個々の論点につき、問題の所在を確認する。
現場で自分なりの論証を作れるものなのかを確認する(「第2」「1」)。作れないようであれば、理解を深め、論証を作れるように努力する(「第2」「2」~「4」)。それでも作れないものについてのみ論証パターン等を参考に暗記する(暗記量をできるだけ減らす。ただし、定義は正確に覚える。)。
4 仕上げ
短答用の知識を含めた細かい知識を入れていく。
第2 学習の指針
1 テキストを読んでいる際に「論点」が出てきたら、問題の所在だけ確認し、結論とその結論に至る理由を自分で考えてみる。
2 考えたらすぐにテキストで答え(判例、学説等)を確認する。自分の考えとテキストの答えが違っていたらどうして違っていたのかを考える(例:誰かの利益を考慮し忘れた)
3 少し考えてわからないものは、あまり悩まず、すぐテキストで答えを確認する。それでもわからなければ無視する。あるいは、誰かに聞く。とにかくあまりこだわらない。
4 1~3を意識しつつ、一冊のテキストをできるだけ短期間で(細かいことは気にせず、)反復してみる。全体像がわからなければ理解できないことが実は多い。
5 できる人のマネをしてみる。論文の勉強は、できる人の模倣から始まる。
6 漫然と勉強しない。例えば、テキストを読む際も、テキストの記述を、論文において、答案のどの部分にどのように使えるのかを考えながら読む。例えば、テキストの記述を、定義、趣旨(保護法益)、要件、効果、原則、例外、必要性、許容性等に区別しながら読む。
7 目的を決めて勉強する。今やっていることがどの能力を高めることになるのかを具体的に意識して勉強する。同じテキストに取り組む場合でも、目的意識を持っているか否かで得られる効果は全く違う。
第3 その他
・入れた知識が論文でどう使えるのか、点数になるのかを常に意識する。
・基本的事項(定義、趣旨(保護法益)、要件、効果、規範、規範とあてはめの対応等)に高い配点がされている。したがって、汎用性のある基礎知識がまずは大事。
・配点を意識して問題文を読む。配点を意識しながら問題を解くことで、徐々に「この事実があるからこれを書いて欲しいんだろうな」といったことが見えてくる。
・問題文にこの事実があるから、この論点を書く、この定義を書く、あてはめをする、という意識を持つ。
・基本論点に関する記述が答案の多くを占めるべき。
・条文を大切にする。求められているのはあくまでも法解釈。条文から離れた議論は避けるべき。
・条文どおりで不都合がないなら、それでよい。適用する条文がない、あるけど不明確、形式的に適用すると不都合という場合に論点が出てくる。ただし、この場合も条文の趣旨を考える等、あくまでも法解釈であることを忘れない。
・実務家になるための試験である以上、まずは判例が大切。学説について過度に詳しくなる必要はない。ただし、一つの見解しか知らないとその論点の問題の所在が見えてこない場合はある。その意味で様々な見解を知ることは有益。
・例外を問われた場合はまず原則を書く。
・問題文に挙がっている事情はできる限り多く使う。
・自分の言葉でわかりやすく書く。無理に難しい言葉を使う必要はない。
・例えば、「取引の安全」という場合にも、具体的にどのような取引の安全を害することになるのか事案に応じた具体的な内容を書く。
・問題文をよく読む。問いに答える。知っている知識に安易に飛びつかない。