受験指導をしていた際に配布していた資料があったので、ここに置いておきます。一応ちょとだけ直しましたが、民法改正に対応していなかったりする点はご了承ください。
目次
- ① 民法の論文問題=「~できるか」の問題
- ② Aがしたいこと、Bがしたいことは何かを考えてみる
- ③ AとBのうち、“したいこと”ができなければかわいそうな方(積極的に救済を求めるであろう方)を裁判の原告に見立てて考える
- ④ ③で見立てた原告が“したいこと”の中でも、どれが実現されるのが原告にとって最も利益になるのかを考えてみる
- ⑤ 原告が“したいこと”を法的なレベルで考える(法的根拠の設定)
- ⑥ 原告が“したいこと”が認められるための要件(請求原因事実)を考える(④で検討した順に従って一つずつ検討していく)
- ⑦ 各要件の意義を確定する
- ⑧ 本問において各要件を充たすか検討する(事実のあてはめ)
- ⑨ ⑧で形式的に出た結論が、実質的に不都合でないかを考える
- ⑩ 原告の請求が要件を充たす場合、被告の抗弁を考える(以下、⑭まで、原告の請求の場合と考え方は同じ)
- ⑪ 被告の抗弁の要件を考える
- ⑫ 各要件の意義を確定する
- ⑬ 本問において各要件を充たすか検討する
- ⑭ ⑬で形式的に出た結論が実質的に不都合でないかを考える
- ⑮ 同じ要領で原告の再々抗弁も検討(⑩~⑭参照)
- ⑯ 他に原告が“したいこと”(や被告側の“したいこと”)があればそれも同じ要領で検討していく
① 民法の論文問題=「~できるか」の問題
→「AB間の法律関係」を問われている場合でも、結局は“Aができること”と“Bができること”は何かを聞いている。
② Aがしたいこと、Bがしたいことは何かを考えてみる
例) お金を払って欲しい、物を渡して欲しい
③ AとBのうち、“したいこと”ができなければかわいそうな方(積極的に救済を求めるであろう方)を裁判の原告に見立てて考える
例) ②の例に該当する方
④ ③で見立てた原告が“したいこと”の中でも、どれが実現されるのが原告にとって最も利益になるのかを考えてみる
例) 「AがBに時計を売る契約をし、Aがその時計をBに引き渡さない場合」
1 まず、契約している以上、BとしてはAに時計を渡して欲しい
2 Aが履行しないのならば、時計はもういらないので、支払った代金を返して欲しい
3 Bは、実はその時計を転売することを考えており、Aが履行しなかったことによって転売利益分の損害を被った。その損害をAに賠償して欲しい
→これらが、答案上、“したいこと”の検討の順序になる(原告がしたい順に検討していく)
⑤ 原告が“したいこと”を法的なレベルで考える(法的根拠の設定)
・物権的請求権(物権的返還請求権、物権的妨害予防請求権、物権的妨害排除請求権、占有訴権等)
・債権的請求権(契約、事務管理、不当利得、不法行為)
例) ④の例
1 売買契約(555条)に基づく履行請求
2 解除(541条or542条)に基づく原状回復請求(545条1項)
3 債務不履行に基づく損害賠償請求(415条)
※①~⑤は問題文で指定されていることも多い。その場合には、当然省略する。
⑥ 原告が“したいこと”が認められるための要件(請求原因事実)を考える(④で検討した順に従って一つずつ検討していく)
例) 「所有権に基づく物権的返還請求権」が請求根拠の場合、要件は、①自己所有②相手方占有
→要件のほとんどは、条文に書いてあるが、条文に書いていないものの解釈上要求される要件もある
⇒論点 例) 541条解除における債務者の帰責性(※民法改正によって不要になりました)
⑦ 各要件の意義を確定する
→要件の中には、その解釈に争いがあるものがある
⇒論点 例) 94条2項の「第三者」の意義
⑧ 本問において各要件を充たすか検討する(事実のあてはめ)
→あてはめは、「問題文の引用+評価+規範へのあてはめ」が基本
例) Cは、AB間の甲不動産売買の事実を知りつつAから不動産を買い受けており、かつ、Bに不当に高く売りつける目的で同不動産を買い受けた者であり(問題文の引用)、このようなCの行為は自由競争の範囲を逸脱するものであるから(評価)、Cは、登記の欠缺を主張することが信義則に反する者といえ、背信的悪意者にあたる(規範へのあてはめ)。
→要件を充たさない場合:原則として原告の請求は認められない
→要件を充たす場合:原則として原告の請求は認められる
⑨ ⑧で形式的に出た結論が、実質的に不都合でないかを考える
→不都合でなければ、原則的には請求可(あとは⑩以降が問題となる)or 不可で確定
→不都合であれば、修正できないかを検討
⇒論点 例) 94条2項類推適用
⑩ 原告の請求が要件を充たす場合、被告の抗弁を考える(以下、⑭まで、原告の請求の場合と考え方は同じ)
例) 同時履行の抗弁(533条)、留置権の抗弁(295条)
⑪ 被告の抗弁の要件を考える
⑫ 各要件の意義を確定する
⑬ 本問において各要件を充たすか検討する
→要件を充たさない場合:原則として被告の抗弁は認められない(原告の請求が認められる)
→要件を充たす場合:原則として被告の抗弁は認められる(原告の請求が認められない)
⑭ ⑬で形式的に出た結論が実質的に不都合でないかを考える
→不都合でなければ、原則的に⑬で確定(あとは⑮以降が問題となる)
→不都合であれば、修正できないか検討
⇒論点 例) 295条2項「占有が不法行為によって始まった」とはいえないが、適法な占有後、不法と知りつつ占有を続けた場合
⑮ 同じ要領で原告の再々抗弁も検討(⑩~⑭参照)
⑯ 他に原告が“したいこと”(や被告側の“したいこと”)があればそれも同じ要領で検討していく
※何をメインで書くか、どこに時間や分量を割くかは始めのうちはあまり気にしなくてよい。まずは、「時間さえあればきちんとした答案が書ける」という状態を目指す。